舌癒着症矯正術を希望する乳児433名に対し舌癒着度、顔色、手足の冷え、腹部膨満、などを観察し、睡眠状態、哺乳状態、泣き方、抱き癖、向き癖、無呼吸の有無などを術前後に母親にアンケート調査した。結果、72.9〜98.3%の症状改善がみられた。眠りが浅い、いびきをかくなど睡眠状態は96.1%の患児に改善がみられ、84.7%の母親は母乳の飲み方がよくなったことを実感し、95.1%の母親は本矯正術を受けたことに満足していることがわかった。また母乳育児向上のためにも本矯正術は有効であると思われた。 簡易型終夜睡眠モニターを術前後に貸し出し、睡眠時の動脈血酸素飽和度(SpO_2)、脈拍、口鼻呼吸、気管音を測定した。結果、術後SpO_2平均値、SpO_2最低値、SpO_295%以上の割合は有意に上昇し脈拍数は減少する傾向がみられた。慢性的な低酸素症の改善に有効と思われた。乳児に鼻カニューラの装着は困難であったため無呼吸、イビキの測定はできなかった。 近隣の解剖を行なっている大学法医学教室に出向き、乳児突然死の解剖に立会い、舌癒着症の観点から観察したところ、SIDSと診断された全例に高度の舌癒着がみられた。遺族に対して生前の症状や生活状態について聞き取り調査したところ、反り返ってよく泣く、睡眠が浅くいびきをかくなどの症状が多いことがわかった。 以上の結果より、SIDSと診断された中に高度舌癒着症児が存在すること、舌癒着症矯正術により低酸素の症状が改善されSpO_2も上昇することなどから、SIDSの予防的処置としての可能性が考えられた。今後、さらに症例数を増やし、矯正術の効果について多角的に検討していく予定である。
|