研究概要 |
活性酸素による障害を分子レベルから解明することを目的に,活性酸素産生剤であるパラコート(PQ)を用いて遺伝子発現レベルの変化を肺・腎について検討した。PQ 20mg/kgを腹腔内投与し,投与後3h,24hさらに48h後に再度PQを投与して3hに肺および腎を摘出し,対照群を含む4群についてRNAを抽出してmRNAの発現変化を比較検討した。一部肺での発現が強い遺伝子については免疫染色によってタンパク発現の局在を調べた。 まず肺については,昨年からの継続でthioredoxin, glutathione S-transferaseなどの他hemeoxigenase(HO 1),NADPH-oxidoreductase(NQO 1)を追加して検討した。その結果,いずれも経時的に促進効果が観察されたが,とくにHO 1,NQO 1について強い誘導がみられた。それぞれの特異的な抗体で肺組織切片を染色すると,いずれも気管上皮細胞(クララ細胞とも一致して)に陽性反応が得られた。 一方,PQは腎に対しても大きな影響を与えることはよく知られている。今年度は腎を対象にDNA arrayとそのreal-time PCRでの確認を行った。すなわち,まずDNA arrayの結果から得られるMT 1,PEPCK ICAM1,ATP1B1,COX5B,CCND2,biliverdin reductase, cathepsin L, GOT 1,NDKA,HO 1,glutathione S-transferase Yb2,thioredoxin, Cu,Zn/SOD,Mn/SODについてreal-time PCRでPQ投与3hでの影響を調べた。その結果,7遺伝子について有意な発現の促進が認められた。とくにmetallothionein 1(MT 1)およびHO 1の発現促進は顕著であり,MT 1では約3倍,HO 1では約20倍に増加しており(ともにp<0.005),腎ではPQ投与初期のkey遺伝子として反応することが示唆された。
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