研究概要 |
除草剤パラコート(PQ)によるヒトでの肺線維症はよく知られているが,実験動物では個体差が大きくその線維化モデルは未だ報告がない。今年度は,PQを直接マウス肺に暴露し,マウス肺線維化モデルの作製について検討した。方法:PQ溶液(20μL;0.01,0.02,0.04mg個体)を雄性C57BL/6Jマウスに麻酔下で点鼻投与した。その後経日的に体重の変動を測定し,実験最終日に肺を摘出して切片を作製,hematoxylin & eosin(HE), Masson's Trichrome(M-T)およびElastica Van Giesoon(E-Van-G)染色などを行い組織学的に評価した。結果と考察:生理食塩水投与群(コントロール群)に比較し,PQを投与した群はすべていったん体重低下を示した。PQ投与3日で,肺は肉眼的にも炎症が強く,組織学的にもリンパ球浸潤を中心とした強い炎症反応が観察された。その後,体重が増加に転じる個体は生存を維持したが,増加に転じない個体の多くは投与11日以内に死亡し,PQの用量-反応性が認められた。死亡したマウスの肺は強い水腫様変性と出血が全体的に認められた。一方,生存した個体では2〜3週間で肺重量/体重(比率)がPQの用量と相関して有意に増加した。肺の萎縮は観察されず,炎症性細胞やfibroblastが観察され,M-T染色,E-Van-G染色による肺の線維化を認めた。高用量(0.04mg)を投与され長期間生存した個体では,肺の線維化が顕著で,肺胞の融合や間質の肥厚がみられ,肉眼的にhoneycomb状を示す個体も観察された。また肺細気管支に多数の細胞片がPQ投与後12〜24時間で観察され,PQによる生体の反応がかなり早い時期に起こっていることが示唆された。この細胞片は抗urine protein 1抗体(クララ細胞に対する抗体)によって特異的な陽性像を示した。
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