研究概要 |
除草剤パラコート(PQ)は活性酸素による毒性であるといわれており、致死率の非常に高い毒物である。PQによる肺障害には投与後数日間の"destructive phase"と数週間経過して肺線維症に発展する"proliferative phase"がみられる。我々が作製したマウスのPQ肺モデルでも、投与後5-10日で死亡する個体,その後3週間まで生存を維持するが顕著な線維化が観察される個体が存在する。本研究では障害の発生および治療にとくに重要であろうと思われる初期"destructive phase"に焦点をあて、PQによる肺での遺伝子発現変化を中心にreal-time PCRで検討した。【方法】PQ肺モデルはC57BL/6JマウスにPQ(0.02,0.04mg/mouse)を点鼻投与し、対照群は生理食塩水20mLを投与した。投与後6h,24h,5dに肺からRNAを抽出,cDNAを作製後、45遺伝子についてreal-time PCRで検討した。【結果と考察】"destructive phase"での「初期マーカー」として発現の促進する遺伝子Mt1,Mt2,Hmox1,Gc1,GR, IL-6,IL-13,Txn1,Fas, FasL, Lpin2,Mmp1a, Mmp12、また有意に抑制する遺伝子としてSfp-B, CAT, EC-SOD, GSTなどが認められた。一方、「後期マーカー」として5dのみに有意な増加を示すprocollagen, elastin, fibronectinなどfibrosisに関連する遺伝子およびMmp9,Timp1さらに24h以降に影響がみられる遺伝子としてMmp3,Mmp8,VEGFAが認められた。以上,これらの遺伝子がPQによる肺障害の発生機序解明に重要なkey遺伝子になる可能性が示唆された。
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