研究概要 |
近年、うつ病とインスリン抵抗性の関連が注目されている。生活習慣病の共通の病態生理学的基盤として肥満があるが、肥満と関連する遺伝子多型としてER22/23EX、N363S、BclI(GRL)などのglucocorticoid receptor(以下、GR)多型がこれまで報告されてきた。うつ病ではhypothalamo-pituitary-adrenal axis(以下、HPA axis)の亢進がしばしば認められ、これらが内臓肥満を惹起すると考えられるhypothalamic arousalと関連している可能性があることから、我々はこれらのGR多型とインスリン抵抗性の関連を検証する計画を立てた。 BclI(GRL)多型は従来サザンブロット法にて検討されてきた。我々は昨年度の60歳以上の耐糖能正常者群に加えて、今年度は75goGTTにてインスリン抵抗性を認めた成人のうつ病患者20例に限定し、BclI多型の解析を試みた。 primerとしてForward:5‘-GCAGGAACATTTGAACGTA-3'、Reverse:5‘-AGCAGAAGTACTAACAAAGAGC-3'を用意し、hybridization probeとして 5‘-TTAGACACAGGTCTTGCTCACAGGGTTCTTGCCATAAAGTAGACAAGTTA-3'-Fluorescein,5‘-LCRed640-GTCTGCTGATCAATCTCTTTA-3'-phosphrylationを用いてLight Cycler解析に供した。Tmピークの低いものが従来法の4.5kb band、larger Allele(以下、l-Allele)に、高いものが2.3kb band(以下、s-Allele)に相当し、l-Alleleが内臓肥満、高血圧との親和性が高いと考えられている。 60歳以上の耐糖能正常者100例の検討では、s/sのhomoが61例、s/lのheteroが31例、l/lのhomoが8例で、s-Alleleの出現頻度が76.5%、l-Alleleの出現頻度が23.5%であった。これに対し、インスリン抵抗性を伴ううつ病患者では、s/sのhomoが17例、s/lのheteroが3例、l/lのhomoが0例で、s-Alleleの出現頻度が92.5%、l-Alleleの出現頻度が7.5%であった。
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