研究概要 |
【研究目的】 本研究は、腫瘍血管新生阻害を標的として、数種類の天然薬材から活性成分を分離し、その構造決定およびその作用機構について検討した。また、免疫機能に及ぼす影響も併せて検討を行った。 【研究実績の概要】 1.研究材料として、伝統的に癌に有効であるとされている数種類の天然薬材を選択し、その一つとして、Agaricus blazeiの担子歯類を選び、その水抽出物中のMeOH可溶性分画に高転移株肺癌細胞(Lewis lung carcinoma, LLC)担癌マウスにおいて、抗腫瘍および肺への抗転移作用が認められ、また、腫瘍血管阻害作用を有することを見出した。 2.上記の実験に基づいて、In Vivo評価実験での腫瘍血管新生の阻害活性を指標として、低分子の腫瘍血管新生阻害物質を単離し、その構造が^1H-NMR,^<13>C-NMRなどの機器解析から、Sodium Pyroglutamateであることを明らかにした。 3.単離・構造決定したSodium PyroglutamateをLLC移植マウスでの抗腫瘍および肺への抗転移効果を検討した結果、30,100,300mg/kgの用量で強い抗腫瘍および肺への抗転移効果を示した。 4.従って、Agaricus blazeiから単離したSodium Pyroglutamateの抗腫瘍および抗転移効果は、腫瘍血管新生阻害作用によるものと推定した。その詳細な作用機構に関しては更に、分子レベルで検討中である。 5.脾臓リンパ球のT細胞の分布を検討した結果、担癌動物におけるCD8およびNK細胞数の低下がSodium Pyroglutamateの投与によって阻止され、また、腫瘍組織中の血管新生の減少、癌細胞のアポトシースの増加、CD8およびNK細胞数の浸潤の増加が免疫組織学的染色によって明らかにした。従って、Sodium Pyroglutamateの抗腫瘍・抗転移効果には血管新生阻害作用以外に免疫増強作用が関与していることが推定された。その詳細な作用機構は脾臓リンパ球からのサイトカインシグナルを検討中である。 6.上記以外の天然薬材以外に、アユールベーダ医学で使用されている生薬から大腸癌細胞に対する抗腫瘍・抗転移作用成分を単離し、腫瘍血管を阻害することを見出した。その作用が免疫組織学的研究から腫瘍中のHIF-1αの発現抑制を介していることを推定し、現在検討中である。
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