研究概要 |
【研究目的】 本研究は、腫瘍血管新生阻害作用および免疫増強作用を標的として、天然薬物から活性成分を単離・構造決定およびその作用機構について検討した。 【研究実績の概要】 1.魚油中のエイコサペンタエン酸(EPA)の長期保存によって生じたEPA誘導体を検討した結果、ルイス肺癌細胞(LLC)移植マウスで抗腫瘍・抗転移効果および腫瘍による血管新生阻害作用を認めた。 2.ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)からの血管新生阻害を指標として、長期保存のEPAから新規なEPA誘導体を2種類得た。^1H-NMR,^<13>C-NMRなどの機器分析から、EPAの2量体およびhydroxyethylester体であることを明らかにした。 3.EPA2量体およびHydroxyethylester体は何れもLLC癌細胞およびHUVECに対してEPAより強いDNA合成阻害作用を示し、HUVECからの血管新生阻害作用もEPAよりも強いことが判明した。 4.EPA誘導体はLLC細胞からのO_2^-産生を増加した。上記化合物はVEGF誘導による血管新生も抑制した(In vivo)。 5.LLC移植マウスでの癌組織中の免疫組織化学および脾臓リンパ球のT細胞分類の検討から、EPA誘導体投与は、癌移植による脾臓免疫能(CD4^+,CD8^+およびNK細胞)の低下を防止し、癌組織のアポトーシスの誘導、CD8^+およびNK陽性細胞の癌組織への浸潤および血管新生阻害作用を示した。 6.これらの事実は、長期保存によって生じたEPA誘導体には抗腫瘍・抗転移作用を有し、その作用機構は、O_2^-産生の増加による癌細胞へのアポトーシス誘導、脾臓免疫活性化によるCD8^+、NK細胞の増加および腫瘍血管新生阻害作用による複合的な作用であることが判明した。 7.現在、上記以外の天然薬剤からVEGF-2受容体のリン酸化阻害を介した抗腫瘍・抗転移剤を見出している。
|