1.前年度では腸管粘膜T細胞(LPT)のT細胞受容体介する刺激に対する低応答の要因として考えられていたCD25^+CD4^+制御性T細胞(T_R細胞)の関与につき検討したが、LPTよりT_R細胞を除去してもLPTの低応答性は改善しなかった。前年度の検討ではLPTをCD3抗体(OKT3)で刺激後のタイロシンリン酸化のみ検討したので、本年度ではリン酸化LAT(linker for activation of T cells)抗体(anti-phospho-LAT)を用いてより特異的なT細胞の細胞内情報伝達系を解析することを試みた。その結果LPTではCD3抗体で刺激後も無刺激同様phospho-LATの増加は認めなかったが、T_R細胞を除去したLPTでも刺激後のphospho-LATの増加は認めなかった。このことはLPTのT細胞受容体介する刺激に対する低応答がより、本質的なものであり、LPTにおいても末梢血T細胞と同様にその存在が明らかとなっているT_R細胞によるものでないことか明らかにされた。 2.当初我々が想定していた仮説が否定的てあったため、LPTにおけるT細胞受容体情報伝達系におけるphosphatase系に関し検討したがLPTの低応答を説明できるデータは得られなかった。 今回の検討は我々の仮説か否定的なことを証明したのみで、肯定的なデータを得るに至らなかった。今後はこのデータを基に更に検討を重ね、LPTのT細胞受容体介する刺激に対する低応答の機序の解明ならびに、炎症性腸疾患および経口免疫寛容に対する関与を検討していきたい。
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