研究概要 |
本邦では2-300万人の肝炎ウイルスキャリアがいると推定され、年間約4万5千人が肝癌や肝不全で死亡している。C型肝炎では治療によって、肝発癌の抑制のみならず生命予後の改善も認められる。しかしながら、有効とされるIFN・リバビリン併用療法によっても、約半数の症例は依然として難治である。またB型肝炎に関しても、ラミブジンなどの抗ウイルス剤が用いられているが、治療抵抗株の出現がみられ、治療困難な例も多い。 我々は、IFN・リバビリン治療効果とウイルス側因子に関して、治療不応例、再燃例、著効例におけるC型肝炎ウイルス(HCV)全塩基配列を解析し、有効例、著効例では不応例に比べて、HCVの変異率が高く、特に非構造蛋白5A・5B領域に変異の集積傾向がみられることを明らかにした。また自然経過中と治療中の変異率を比較し、治療反応例では自然経過中においても変異率が高いことを示した。またウイルス複製系のモデルであるHCVレプリコンを用いて、IFN・リバビリン投与時の解析により、リバビリン投与時には非構造蛋白領域5A・5B領域の変異率が高いことを確認した。また、HCVのIRES領域のsiRNAを用いて、ウイルス増殖を抑制し得ることを示し、治療応用への可能性を示した。 また、B型肝炎ウイルス(HBV)に関しても、各種病態における全HBV塩基配列を検討し、HBVのcore,precore,pre-S領域の変異が病期の進展や肝発癌と関連がみられることを示した。また、ラミブジン抵抗株の出現とHBVのポリメラーゼ領域の変異との関連が示唆された。 さらに、生体側の因子についても、肝細胞内遺伝子の発現を検討し、HCVによりNFkBやAP-1の発現に変化がみられることを示した。現在これらの発現変化と、治療効果や発癌との関連について検討中である。
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