研究概要 |
肝不全症例への移植を臨床応用するため、Embryonic Stem (ES)細胞を肝細胞に分化させることを試みた。 ES細胞からは、肝細胞以外の細胞も分化するので、移植するには肝細胞のみを分離することが必要である。 肝細胞は、尿素サイクル、糖新生、アミノ酸産生、など特異的な一連の酵素群を有する。したがって、これらの産物を除き、その基質を含有する培地で培養すれば、E細胞から分化した肝細胞を分離できるものと考えられる。 そこで、アルギニン、ブドウ糖、チロシンを除き、オルニチン、ガラクトース、グリセロール、フェニルアラニンを添加し、透析した仔牛血清を10%含む培地を作成した(hepatocyte selection meida, HSM)。ES細胞をembryoid bodyを経由して、肝細胞への分化を開始して21日、培地をHSMに変更してさらに10日培養し、解析した。細胞数は、対照の培地の3%にまで減少していた。肝細胞にのみ取り込まれるインドシアニングリーン(ICG)を培地に添加したところ、HSMで培養した細胞は、ほとんどの細胞がICG陽性であった。肝細胞に特異的な遺伝子であるalpha-fetoprotein (AFP)、albumin、glucose-6-phosphodiesterase (G6PD)、transthyretin (TTR)の発現をreverse-transcription PCR法にて検討した。対照の培地はAFP陽性であったが、HSMで培養した細胞は、AFP、albumin、G6PD、TTRの全てが陽性であった。以上の検討から、HSMを用いるとES細胞から分化した肝細胞を分離することが可能なことが明らかになった。特筆すべき点は、HSMで培養すると肝細胞への分化を促進することである。
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