研究概要 |
【目的】胚性幹細胞(ES細胞)を肝細胞に分化させて、再生医学への応用を目的とし、我々は、ES細胞から分化した肝細胞を分離する培地の開発を試みた。肝細胞の分化を促進する転写因子CCAAT/ehancer binding protein(C/EBP)α、C/EBPβを導入目的のアデノウィルスベクターを作成した。【方法】肝細胞は、生存に必要なアルギニン、ブドウ糖を合成する尿素サイクル、糖新生を有する。そこで代謝産物のアルギニン、ブドウ糖を除き、その基質であるオルニチン、ガラクトース・グリセロールを添加した培地(hepatocyte selection medium, HSM)で培養し、肝細胞の分離を試みた。肝細胞の確認は、1.RNAよりRT-PCR法にてアルブミン、glucose-6-phosphodiesterase(G6PD)等の肝細胞に特異的な遺伝子の発現を検出、2.肝細胞に特異的に取り込まれるインドシアニングリーン(ICG)を添加、によった。in vitro ligation法で、C/EBPα、C/EBPβを発現するアデノウィルスベクターを作成、ウェスタンブロット法にて両遺伝子の発現を確認した。【成績】HSMで培養すると、細胞数が対照の培地に比して、生存する細胞が3%に低下した。HSMにて培養した細胞よりRNAを抽出したところ、アルブミン、G6PD等の遺伝子の発現を確認した。対照の培地に比してHSMで培養した細胞は、ICG陽性の細胞は有意に多かった。作成されたアデノウィルスベクターは、C/EBPα、C/EBPβを発現することが確認された。【結論】HSMは、ES細胞から肝細胞への分化を促進し、分離することが可能なことが示された。今後は、アデノウィルスベクターにてC/EBPα、C/EBPβを導入し、さらに肝細胞への分化を試みる予定である。
|