研究概要 |
本研究では,AFPなどのフコシル化糖蛋白とその酵素学的背景であるFUT8を指標として,肝癌組織中のFUT8を含む高発現および低発現遺伝子をスクリーニングし,遺伝子ならびにその糖蛋白の同定を試みた.さらに,変化を示す遺伝子群の抑制ならびに活性化による肝癌細胞biological behaviorの調節手技の確立を試みた.はじめに,FUT8活性抑制による糖鎖構造変化と,それに伴う肝癌細胞の浸潤動態の変化を,細胞系列の樹立によって評価した.FUT8アンチセンスRNAによる発現抑制実験として,mRNAの861〜874塩基に対するセンス,アンチセンス合成RNAを用いた.HepG2細胞の培養上清中のフコシル化AFP分画は80%以上の高値であった.FuGENE6を用いてアンチセンスRNAをHepG2細胞にリポフェクション後,フコシル化分画の抑制を確認した.次にFUT8に対するsiRNAによる抑制発現株の樹立を試みた.mRNAの1002塩基のAA配列に続く19塩基配列をpolymerase-III H1-RNA gene promotorの制御下に,ポリA配列を欠き3'端にUU突出を有するRNAが転写されるベクターであるpSUPER.retroにクローニングした.また,配列特異的発現抑制を確認するため,9塩基をGA置換の変異配列もクローニングした.本ベクターをHepG2細胞に感染させ、持続発現株の樹立を試行したが,選択薬剤であるpuromycin添加により細胞が死滅する現象を認めた.そのため,negative-control用vectorをtransfectionする系を作製し,同様のselectionを試みたが、siRNA発現ベクターを感染させた細胞は,negative-control vector感染細胞よりも低濃度のpuromycinでも死滅する結果で,現在この点の解決を行っている.
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