研究方法と結果 HLA-B27トランスジェニックラット、DSS大腸炎マウスの2種類の炎症性腸疾患モデルを用いて、レクチンの抗炎症作用、障害修復作用について検討した。レクチンはPHAとConAの2種類を経口投与した。同時に、抗炎症作用を有するとされる新しい栄養素材であるクルクミンも検討に加えた。 HLA-B27トランスジェニックラットにおける検討では、体重、腸管長と腸管湿重量、組織学的スコア、myeloperoxidase活性、血清IL-6レベルなどを検討項目としたが、いずれもレクチンによる抗炎症作用は確認できなかった。クルクミンについては、組織学的スコアが低下し、抗炎症作用を認めた。 DSS大腸炎モデルでは、レクチンの障害修復作用を検討した。体重、組織学的スコア、腸管重量などは、レクチン投与群とコントロール群とに有意差は認めなかった。一方、クルクミンはmyeloperoxidase活性や組織学的スコアが低下しており、大腸炎に対する抗炎症作用が確認された。 考察 HLA-B27トランスジェニックラット、DSS大腸炎マウスのモデルは、潰瘍性大腸炎類似のモデルとして用いられている。今回用いたレクチンPHA、Con-Aの粘膜増殖作用は小腸に顕著であり、大腸の粘膜増殖作用は軽度である。このことが、今回、大腸炎モデルで有意な治療効果が得られなかった要因と考えられる。一方、クルクミンは、DSS大腸炎モデルでも抗炎症作用が確認され、今後の臨床応用が期待できる。
|