(1)小腸再生チューブの作製:人工高分子であるポリグリコール酸およびポリ乳酸を用いた小腸移植に適応した人工チューブはすでに完成した。また、われわれは今回bFGFがきわめて腸管上皮の再生に有用であることを証明した(Matsuura et al. Gastroenterology 2005)。この結果から、bFGFを小腸再生に応用することが重要と考え、bFGFが徐放可能となるような生体内分解性ゼラチンの作製を試み、これについてもすでに完成しえた。このbFGF徐放可能な生体内分解性ゼラチンを上記チューブに貼り付け、採取された骨髄細胞をそのチューブに接種し、小腸切除後のラットに移植した。移植後2ヵ月および3ヶ月後のチューブ内には小腸上皮と考えられる粘膜が再生していることを我々は確認しえた。 (2)現在、再生された小腸粘膜に対して組織学的評価および機能評価をおこなっている。また、超細経の内視鏡からの観察では再生開始時より絨毛上皮は比較的早期から観察されることが証明された。またこの内視鏡による経時的な観察結果より、再生が進むにつれて絨毛内の血管密度がまず増強し、その後絨毛密度の上昇および肥大が確認された。 (3)小腸再生上皮内の免疫担当細胞に関しては、現時点ではT細胞(CD4およびCD8細胞)、B細胞などの比率は正常小腸上皮内と比べても有意な差は認められなかった。 (4)GFPラットからの骨髄細胞の採取は完成している。現在、(1)で記載させていただいた再生チューブにGFPラットから採取された骨髄細胞をチューブに接種後、同様の移植処置を施行しており移植された骨髄細胞の分布状態、および分化しうる細胞についての検討をおこなった結果、間質細胞および上皮細胞に分化しうることが示唆された。
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