RUNX3がTGF betaシグナル伝達系に及ぼす影響について検討した。 1.TGF betaによる増殖抑制作用の増強 RUNX3はTGF betaシグナル伝達系の下流でSMAD4と結合して転写因子として機能していることが判明している。そこで、RUNX3がTGF betaシグナル伝達系に及ぼす働きを検討するために、TGF betaによる増殖抑制作用を認めるヒト癌細胞株をTGF betaシグナル伝達系に大きな障害を受けていない細胞株として選択した。そのうちからRUNX3を発現していない細胞株に対してRUNX3を安定強制発現させたところ、TGF betaによる増殖抑制作用が優位に増強されることを確認した。 2.TGF betaによるG1 arrestの誘導 フローサイトメトリーによる解析ではG1期が優位に増加し、若干subG1の増加を認めたが、TUNNEL法によるアポトーシスの差は認められなかった。以上よりRUNX3を安定強制発現させたことによりTGF betaによるG1 arrestの誘導が増強されたことが推測された。 3.TGF betaによるp21の誘導 ウエスタンブロット法により細胞周期に関連する蛋白の発現を検討したところ、RUNX3を安定強制発現させた細胞においてp21の発現がより強く誘導された。 4.Tumorigenecityの検討 ヌードマウス皮下に腫瘤形成実験を行なったところ、RUNX3を安定強制発現させた細胞において腫瘤形成を認めなくなった。 以上よりTGF betaによるP21の誘導をRUNX3が増強することが強く示唆された。
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