研究概要 |
1.RUNX3がTGF betaシグナル伝達系の中でもp21の発現を増強させ、G1 arrestを強力に誘導することは昨年までに証明した。 2.TGF-beta下流で細胞周期に関係している蛋白として、p27,c-myc, p21などが上げられるが、c-mycおよびp27はRUNX3の有無に関わらずTGF-betaによる刺激でその経時的変化には増減は認められなかった。しかしながら、p21はRUNX3が無くても軽度上昇するが、RUNX3を強発現させると著しくその発現が増加することが判明した。その結果、cyclin D1およびEが誘導されG1 arrestが誘導されることが証明された。 3.また、siRNAにより、RUNX3を強発現させた細胞のSmad4およびRUNX3の発現を抑制させると、TGF-beta刺激によるp21の発現が押さえられることも確認した。 4.一方、p21の発現誘導にはSmad3およびSmad4に加え、FOXO3aが必要であることが証明され、TGF-betaシグナル伝達系のコントロールにPI3K/Akt/FOXOシグナル伝達系が重要であることが判明している。そこで、FOXO3aのプロモーター領域を解析したところ、RUNXの結合部位が存在することが確認できたので、TGF-beta刺激により、FOXO3aの発現に変化があるのか、また変化があるとしたらRUNX3の有無によりその作用が増強するかを検討した。RUNX3が存在しない状態では、TGF-beta刺激によりFOXO3aの発現は軽度増強し、RUNX3の発現程度に比例してその誘導は増強されることが判明した。つまり、RUNX3が直接および間接的にTGF-betaの下流でp21の発現を制御し、PI3K/Akt/FOXO系とRUNX3を介して相互にコントロールしている可能性が示唆された。
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