研究概要 |
重症肝不全患者の新しい再生医療/治療法として肝臓への細胞移植療法の可能性がある。肝臓のstem cellとしては、ES細胞や胎児肝細胞、骨髄細胞、あるいは成熟肝中にある、あるpopulationがmatureな肝細胞あるいは胆管細胞に分化可能であると考えられている。特に骨髄細胞は臨床応用するにあたって採取が簡便であり自己の細胞を使用可能であるため倫理上の問題や免疫抑制剤の副作用の問題がなく使用しやすいソースであると考えられる。そこで私どもはこれまでにマウス骨髄細胞を用い(1)骨髄細胞はHGF,OSM,FGF添加下コラーゲン三次元培養においてALBUMIN,cytokeratin19の遺伝子発現が認め、なかでも、bFGFがもっとも高い誘導効果を示した。(2)骨髄細胞において、HGF,FGF,OSMのレセプター発現を認めた。(3)骨髄細胞のbFGF添加下コラーゲン三次元培養にて肝分化マーカー(Albumin,CK18,α1AT,G6Pase)の遺伝子発現を認めた。また、Albumin,CK18蛋白の発現が確認された。(4)骨髄細胞のbFGF添加下コラーゲン三次元培養にて、肝発生の早期に重要な役割を果たす転写因子(HNF1α,HNF3α,HNF3β,HNF4α,GATA4)の発現誘導が認められた。これらの結果からbFGFが骨髄細胞を肝細胞系細胞へ分化させる作用をもつことが明らかになった。また、この形質転換にHNFやGATA4などの転写因子が関与していることを報告した(J Hepatol.2004 Oct;41(4):545-50)。 本年度はさらに上記のマウスを用いた実験結果からヒトの骨髄間葉系幹細胞から肝細胞系の細胞への分化をin vitroで確認し、実際にヒト骨髄間葉系幹細胞をヌードラットの肝臓へ細胞移植を試み肝細胞へ分化するかどうかを確認している。現在得ている結果として、ヒト骨髄間葉系幹細胞が、障害肝へ定着し肝細胞系細胞へ分化することを確認できている。現在は、その生着率の向上、効率の良い細胞移植条件の確立を目指し研究を進めている。
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