研究概要 |
(目的)モチリンおよびモチリン受容体は,消化管運動機能に重要な役割を果たしている。申請者は,モチリンがモチリン受容体のN末端枝,第一,第二,第三細胞外ループのperimembranousのアミノ酸残基に結合すること,モチリン受容体のN末端枝内の2個のCys残基と第一,第二細胞外ループのCys残基は機能発現に重要であること,ペプチドリガンドのモチリンと非ペプチドリガンドのエリスロマイシンの結合部位は異なることを明らかにしてきた。今回,ヒト消化管におけるモチリン受容体のmRNA発現と蛋白発現を解析し、リガンド-受容体結合の機構のさらなる機構の解析を行った。(方法)研究への同得の得られた手術患者あるいは病理解剖が施行された患者19例を対象に,全消化管から一部は全層,一部は粘膜層と筋層に分離して組織を採取した。モチリン受容体特異的なprimerを設定し,real time RT-PCRで定量を行った。またモチリン受容体の第二細胞外ループを認識するポリクローナル抗体を作成後,酵素抗体間接法にて消化管組織の染色を行った。(結果)下部食道から遠位側大腸までの全消化管において,モチリン受容体は,long form typeのみが発現し,short form typeは発現していなかった。全消化管において,部位による発現差異は見られなかったが,筋層では粘膜層に比べて10-100倍多く発現していた。筋層内では,筋細胞の細胞膜,細胞質とともに筋層間神経叢にも強く発現していた。(結論)全消化管にモチリン受容体は発現しており,モチリンが全消化管運動に関与していること,モチリン受容体アゴニストが全消化管機能異常症の治療に応用できることを明らかにした。
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