研究概要 |
脂肪肝炎(steatohepatitis)では、中滴性ないし大滴性の脂肪滴を含有する肝細胞が小葉中心性に多数集簇し、しばしば風船様肝細胞やマロリー体も観察される。また、中心静脈周囲ではpericellular fibrosisと呼ばれる一つ一つの肝細胞を取り囲むような特徴的な線維化が進展する。本症は遺伝的背景を基盤として、肥満による代謝異常を誘因として、発症する原因不明の慢性肝疾患で、しばしば肝硬変を発症する。我々は、β3 adrenergic receptorやinterleukin-1β,microsome triglyceride transferprotein, manganese superoxide dismutaseにおける機能性SNPが肥満や脂肪肝といった本症の背景病変の成立に関与することを今回明らかにした(J Hepatol 40:781-786,2004,Endocrinology145:1880-1888,2004,Alcohol Clin Exp Res28:106S-110S,2004)。この成績は生活習慣病の常として、多様な遺伝背景のもとに生活習慣に肥満を来した場合にNASHを発症すること裏付けるものと考えられた。NASH症例の8割以上の症例は高度めインスリン抵抗性を伴うため、我々は引き続きインスリン抵抗性を惹起する環境要因あるいは遺伝的背景について現在検索を続けている。
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