研究課題/領域番号 |
16590600
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
西原 利治 高知大学, 医学部, 助教授 (60145125)
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研究分担者 |
戸田 勝巳 高知大学, 医学部, 助教授 (40197893)
秋澤 直明 高知大学, 医学部, 助手 (00322280)
小野 正文 高知大学, 医学部附属病院, 助手 (70304681)
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎(NASH) / NASH動物モデル / 肥満 / MTP |
研究概要 |
1)NASH関連遺伝子座の同定 NASH患者および家族の協力を得て240のmicrosateliteについて遺伝的背景を検索し、四つの染色体上に責任遺伝子が存在することを明らかにし、四つのmicrosateliteの内、三つについては、遺伝子データベース上で検索することにより近傍に存在する機能性遺伝子多型SNPを見いだし、NASHの発症・進展と密に関連することを明らかにし、報告した。このNASHの発症・進展と密接に関連する三つの遺伝子多型は、いずれも日本人に高頻度に検出される多型であり、日本人が本症に罹患するリスクが欧米人に比して高い原因と考えられる。 2)Microsomal triglyceride transfer protein(MTP)の機能解析 上記のSNPの一つがMTP上に存在することが明らかになった。MTPは、Apolipoprotein Bに中性脂肪を付加し、血中に放出する酵素である。MTPが機能低下型ホモ接合体になると、肝細胞からの中性脂肪の分泌が低下することを受けて、肝細胞内に多量の脂肪滴が集族する。そこで、肝細胞に高度の脂肪負荷をもたらすモデルを作成する目的で、してknockout miceを作成した。しかし、ヘテロ接合体はもちろん、ホモ接合体も明らかな肝病変をきたすことなく生存した。これは腸管におけるMTPがknockoutされたために、脂肪の吸収が著明に抑制された結果であった。脂肪の吸収が不良なため、高脂肪食負荷をかけても脂肪肝を惹起できず、現在、フルクトース負荷による脂肪肝の惹起試験を実施している。 他方、血管内に脂肪負荷を行うと高度の脂肪肝を容易に惹起することが可能であった。しかし、単純性脂肪肝に留まり、NASH類似の病変を惹起することはできなかった。この事実は、肝細胞に高度の脂肪貯留を単にきたすことのみでは、NASHに特徴的な肝細胞のballooningやMallory体形成を惹起することができないことを意味していると考えられた。この成績は炎症性サイトカインや酸化ストレスなどの要因が脂肪肝に相乗する形で同時に作用する必要性を示す成績と考えられた。
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