T細胞におけるSmad2シグナルの大腸炎症における役割を検討するためにT細胞特異的Smad2欠損マウスを作成し検討した。 loxP配列を有するターゲッティングベクターを作成し、常法に従ってSmad2^<flox/flox>マウスを作成した。Lck-Cre-トランスジェニック(Tg)マウスとSmad2^<+/->マウスを交配させ、Lck-Cre-Tg Smad2^<+/->マウスを作成した。次にLck-Cre-Tg Smad2^<+/->マウスとSmad2^<flox/flox>マウスを交配させ、(1)Smad2^<flox/+>(以下、flox/+)、(2)Smad2^<flox/->、(3)Lck-Cre-Tg Smad2^<flox/+>、(4)Lck-Cre-Tg Smad2^<flox/->マウス(以下、Cre-flox/-)を作成し、解析に用いた。Genomic Southern blotにてCre-flox/-で、T細胞特異的に約50%のflox alleleで挿入配列の欠失を認めたが、完全な欠損は得られなかった。 上記マウスをSPF条件下に9ヶ月間飼育観察したが、Cre-flox/-に自然発症腸炎は認めなかった。 Cre-flox/-と、対照としてflox/+に0.5%または1%Dextran Sulphate Sodiumを自由引水させ大腸炎を誘発した。大腸全長の短縮度、体重減少率、大腸炎病理組織学的スコア、大腸粘膜固有層単核球からのIFN-γ、IL-6、TNF-α産生で両群間に有意差を認めなかった。 Oxazolone注腸大腸炎モデルをCre-fox/-、fox/+に誘発した。体重減少率、大腸炎病理組織学的スコア、大腸組織培養でのIFN-γ、IL-4産生で両群間に有意差を認めなかった。 Lck-CreによるSmad2の欠損が完全でなく、少なくともこの条件下では、T細胞でのSmad2発現低下による大腸炎の発生、増悪は認めなかった。
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