沖縄県宮古群島の一離島の住民を対象に1994年から、B型とD型肝炎の調査を行っている。これまでに2575名が調査され、そのうちB型肝炎ウイルス(HBV)の保有者は236名(9.2%)で、これらの保有者のうち49名(21.2%)がHBVとD型肝炎ウイルス(HDV)の重感染者であった。また、同群島内にある総合病院の受診者を対象とした調査で、HDVの重感染は肝硬変、肝癌への進行に関連していることが判った。 HDVは、これまでに世界中から多数の株が分離され、これらの株間には多様性が大きい。そこで、株間で相同性の高い領域にプライマーを設定し、独自のPCRを開発した。これを用いて、HDV抗体陽性者を検査したところ、約半数はHDV-RNAが陽性で、残りは陰性であった。また、HDV-RNAが陽性者は、高率に肝障害を有したのに反し、陰性者は肝障害がなかった。よって、HDVは感染後、HBVが存在するにもかかわらず、排除される症例が存在することが判った。また、HDVの定量法をリアルタイムPCR法にて開発し、病態との関連を検討した。その結果、HBVとHDVの重感染の肝障害は、主にHDV量と関連することが判った。 HDVはその系統樹解析から、大きく3つのタイプ(I、II、III型)に分類される。宮古群島で見つかったHDVはほとんどがII型に属し、しかもIIbと亜分類された。IIb型は台湾からも報告されているが、宮古群島で見つかったHDV株はより多様性があり、また、その多様性が病態にも影響していると思われた。また、HBVは95%がgenotype Bで、残り5%がgenotype Cであった。
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