ベイズ理論は人工知能(AI)にも応用されている意志決定システムであり、過去の事象を考慮に入れながら、新しいデータが入るに応じて確率を計算し直すことができることから、画像診断のAI化も視野に入れることが可能である。今回の研究では造影超音波法で得られるさまざまな造影パターンを集約し、ベイズ決定を用いたパターン認識により、肝腫瘤性病変の鑑別診断で特異性が高くかつ普遍性のあるパターン分類を作成することが可能かどうかを検討することを目的とした。今回は183結節の肝腫瘍性病変を対象に造影超音波法を用いた前向き研究を行い、肝細胞癌(前癌病変、早期肝癌、進行肝癌を含む)、転移性肝癌、肝血管腫、その他の肝腫瘤性病変を対象に3つの時相(超音波造影剤注入後1分以内のearly vascular phase、90秒前後のlate vascular phase、4-5分前後のlate phase)ごとの造影パターンを抽出し、多変量解析で各腫瘍ごとに診断に有用な因子を分析した。ここで有意となった因子を時相ごとに組み合わせたパターン分類を作成し、ベイズ決定を用いたパターン認識による肝腫瘤性病変の鑑別診断法を決定した。そして、ベイズ決定を用いたパターン認識を前向き研究として応用したところ、肝腫瘤性病変の診断能の感度、特異度、正診率は肝細胞癌で94.8%、94.0%、94.5%、転移性肝癌で90.5%、94.3%、93.4%、肝血管腫で88.0%、99.4%、97.8%と良好な成績が得られた。現在はさらに多数例を対象とし、造影超音波所見とMD-CT所見を対比させた研究を行っており、このパターン認識システムは各種画像診断に幅広く応用できる鑑別診断法となる可能性が高い。
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