研究概要 |
Interleukin(IL)-10はサイトカインのひとつであるが、Th1 T細胞を介した炎症過程のなかでは一般に抗炎症的に作用する。また、腹膜中皮細胞は、存在数あるいはその性質上、遺伝子発現の恒常性や導入効率の高さは十分に期待される。これらの観点から広域性(臓器に対する普遍性)と、遺伝子発現に対する恒常性をも加味した腹膜中皮細胞へのIL-10遺伝子導入は、標的遺伝子のみならず標的細胞をも鑑みたものであり、臨床的応用価値が高いものと期待される。今年度は臨床応用への前段階として、in vitroおよびラットにおける検討を行った。 培養癌細胞株におけるNF-kB活性の測定:血清刺激によるNF-kB活性の変化をEMSA法にて測定したところ、HT29細胞において血清刺激(1-24時間)により増加していた。刺激開始6時間後にピークに達し、刺激前の約4倍に増加していた。 NF-kB活性誘導下におけるIL-10が癌細胞増殖に及ぼす影響:癌細胞株(MKN45,HT29)を96穴プレートへ1000個ずつ播き、NF-kB活性誘導サイトカインであるTNF-α(100ng/ml)により1時間刺激した0,24,48時間後にそれぞれIL-10(100ng/ml)を添加し、72時間後にMTS法により細胞増殖の影響を検討したが、いずれの方法においてもIL-10添加により有意な細胞増殖能への影響はみられなかった。また、同時にNF-kB活性を介した発現増強が報告されているVEGFおよびCOX-2 mRNA発現への影響も測定したが、有意な変化はみられなかった。 腹膜中皮細胞の初代培養系の確立:ヒト腹膜中皮細胞の初代培養系確立の前段階として、ラットを用い、既報(Robson RL et al : J Immunol,2001,167:1028-1038)に従い腹膜中皮細胞の初代培養を行った。また、培養した腹膜中皮細胞およびMKN45細胞にAd-LacZの遺伝子導入を行ったところ、両細胞において導入に成功した。
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