研究概要 |
ヒトB型肝癌切除例を対象としてカセットライゲーション法により、HBV-DNAの組み込みをスクリーニングした。その結果、HBsAg陽性、26結節にHBV DNA組み込みを検出し、それに連続するヒト遺伝子を同定した。組み込まれたヒトゲノム配列は多結節例や再発例を含め全腫瘍において異なっていた。そのヒト染色体位置は1p,1q,2p,2q,3q,5p,6p,6q,7q,8p,8q,10p,11q,13q,14q,17q,19q,20qであり組み込まれた近傍には24個の蛋白をコードする遺伝子が存在した。3症例ではMLL2遺伝子座にHBV-DNAの組み込みを認めた。RNAを抽出し得たMLL2組み込み肝癌2例と他遺伝子への組み込みがあった3症例においてDNA-chip解析を行ったところ、MLL2近傍にHBV-DNAが組み込まれた2腫瘍では遺伝子発現パターンが類似するこが示された。HBsAg陰性例では3例に組み込みを認め近傍には蛋白(1例ではhTERT遺伝子)がコードされていた。この3例は非硬変肝であった。HBV-DNAの組み込みが肝発癌の重要な要因の一つとなる症例が存在することが推測された。B型肝癌の中にはHBV-DNAのヒトゲノムへの組み込みが肝発癌の重要なステップとなっている腫瘍が存在していることを明らかにした。またHBV-DNAの組み込み位置が異なることから、B型肝癌では個々の症例、腫瘍における特性を解析する必要があると考えられた。
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