研究概要 |
消化管各部域(胃、小腸、大腸)の後期発生過程における形態形成、あるいは出生直後の腺管成熟過程に注目し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)発現動態、発現制御の概略を把握する事を目的に、in vivoおよびin vitroの系を運用し、以下の結果を得た。 1.ラット胎児(14.5日齢以降)より摘出した消化管各部域でのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現を、ゲラチンゲル電気泳動でスクリーニングを行い、発現されている分子種、蛋白量、活性の推移を検討した。上皮、あるいは間質での発現が同定された分子種はMMP-2およびMMP-9であった。後者は今回検討した消化管の部域((胃、小腸、大腸)のいづれにおいても活性型の出現を認めず、酵素活性もMMP-2に比して数%程度であった。これに対してMMP-2活性は間質優位の発現を示し、発生過程の進行、特に腺管形成期に一致して増加を示した。MMP-2活性増加の原因は活性型増加に由来するものであった。これらについてRT-PCRを用いて遺伝子発現の推移を検討した所、腺管形成期に一致してMMP-2 mRNAの増加が観察された。現在、MMP-2のinhibitorであるTIMP-2 activatorであるMT1-MMP遺伝子の発現動態を検討中である。 2.胎児ラット胃、大腸器官培養系を用いて、HGF、TGFα等の増殖因子、あるいは副腎皮質ステロイド、Sodium butylate, TGF-β、COX-2阻害剤など分化に影響を与える事が想定されている因子の作用によるMMPの発現変化、活性変化を検討した。HGF、TGF-αなど増殖因子により腺管形成促進、そしてMMP-2の発現増加が観察されると共に、副腎皮質ステロイド、Sodium butylate, TGF-β、COX-2阻害剤などにより、腺管形成促進、そしてMMP-2の発現抑制が観察されている。
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