研究課題
基盤研究(C)
ラット胎児消化管組織の後期発生期およびラット胃粘膜障害モデルを用いた創傷治癒過程の両者を検討する事で、消化管上皮組織の三次元構造の構築、修復、およびその維持に関与するMMPファミリーの動態を検討した。上皮組織の増殖・運動が活発化する消化管上皮組織の腺管形成過程、上皮組織再生過程において、間質系組織でのMMP-2の発現増強と軌を一にして、その活性化酵素であるMT1-MMPの遺伝子発現増強が生じ、MMP-2の不活性型から活性型への変換が促進され、酵素活性増強が生じる事によりマトリックスの大規模な改変が生じる事が見出された。MMP-9については遺伝子発現を認めるものの、mRNA発現量は極僅かであり、腺管形成過程でのプロフィールを正確に検討する事は困難であったが、一方、腺管伸張期に伴ってMMP-9遺伝子および蛋白発現増強、酵素活性増加が観察された。また、胎児ラット胃器官培養系を用いたin vitroの検討では、間質系組織でのMMP-2の誘導にはHGF、TGFα等の増殖因子、あるいは副腎皮質ステロイド、Sodium butylateなどの分化誘導因子が関与している事、また、COX-II等の上皮系組織の増殖を制御する因子が介在して調節がされている事が想定された。さらに、ラット胎児より摘出した胃を用いて、上皮組織の形態形成前(妊娠15日齢)の上皮、間充織の単独初代培養、組織recombinationを用いた器官培養系での検討では、胎児胃の間充織におけるMMP-2遺伝子発現は、上皮組織との存在下で、遺伝子、蛋白、酵素活性のいづれについても顕著な増強が生じる事、また同時にMT1-MMPmRNA発現も間充識で顕著に増強する事が観察され、MMPファミリーの発現が、上皮間質間相互作用により厳格に制御されている可能性が強く示唆された。
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