研究概要 |
【目的】肝硬変にみられる潜在性肝性脳症の特徴を脳高次脳機能の測定より明らかにし、潜在性肝性脳症に関する新しい診断方法についても開発研究する。 【方法】(1)潜在性肝性脳症の脳内物質代謝異常の検討:肝硬変では脳内グリア神経細胞内成分のglutamine(Gln)の増加という脳内物質代謝異常が磁気共鳴分析法(MRS)によりみられるが、従来の1.5teslaのMR装置ではGlnとglutamate(Glu)との分離が困難であった。今回、3.0teslaのMR装置での分離を新しい解析方法を用いて行った。(2)潜在性肝性脳症の診断:潜在性肝性脳症の早期診断目的にコンピュータシステムを開発し肝硬変に施行した。 【結果】(1)潜在性肝性脳症の脳内物質代謝異常の検討:3.0teslaのMR装置により脳内でのGlnとGluとの分離が可能となり、GlnとGluを分離して検討すると肝硬変で増加しているのはGlnであることが明らかとなった。今回の検討ではGlnとアンモニアとの関連は明らかではなかった。(2)潜在性肝性脳症の診断:新しく開発したコンピュータによる定量的精神神経機能検査を実施した。8つの精神神経機能試験(数字追跡試験A,B、数字符号試験、積木模様試験、図形配置試験、反応時間A,B,C)が定量的に簡便に測定することが可能となった。また、550名の健常者による年齢別の標準値を作成し328名の肝硬変に試験を実施した。8つのサブテストの1項目以上の異常を示す症例を潜在性肝性脳症とすると肝硬変の40〜60%の症例が潜在性肝性脳症である可能性が示された。今後はさらに8つのサブテストのどの項目を選択するか、また長期に肝硬変患者の経過を検討したときに、早期に潜在性肝性脳症を診断できるかさらなる検討が必要である。
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