1.ムチンの硫酸基を認識する抗体の性状の検討 抗ムチンモノクローナル抗体PGM34の抗原決定基の構造の解析を進めた。ブタ胃ムチンを出発物質として、まず、抗原ムチンを過ヨウ素酸酸化処理すると抗体との反応性が低下することからこの抗体のエピトープが糖鎖部分にあることを確認した。次いで、大量のムチンをアルカリ還元処理してムチン糖鎖を得た後、ゲル濾過カラムクロマトグラフィーでオリゴ糖を分離した。オリゴ糖混合物をDEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフィーで分離したところ、抗体と反応する糖鎖は酸性画分に得られた。さらに活性画分を順相系HPLC(アミドカラム使用)を繰り返すことによって精製し、エピトープ活性のある糖鎖を2種類、ない糖鎖を1種類精製した。MALDI-TOFMSおよびHPLC法によるアミノ糖分析によって、構成糖を推定したのち、NMRによって構造を解析した。活性のある糖鎖はHSO_3Fuc_2Gal_2GlcNAcGalNAc-olおよびこれからFucが1分子除かれたもので、硫酸基がGlcNAcの6位に結合していた。以上の知見から、PGM34のエピトープは、スルホムチンの硫酸基を有する糖鎖部分にあることがわかった。 2.ラット腸管寄生虫N.braziliensis(N.b)の駆除時期と宿主小腸のムチン変動の関連性 N.b幼虫を感染させてから約2週間後には宿主の小腸ムチンの量的・質的変動を伴う排除機構によって腸管で成熟したN.bの虫体は排除される。その際、宿主腸管に起こる劇的な変動はシアロムチンと反応する抗体HCM31の免疫染色によって知ることができる。ラットにN.b幼虫を感染させたあと、どの時期まで寄生が持続すると宿主の応答が開始されるかを明らかにする目的で、2種類の抗線虫薬を用いて駆虫の時期と小腸粘膜の変動との関連性を検討した。これまでの検討では、虫体が成熟し排卵を開始する時期になると、たとえ駆虫が成功したとしても、宿主の小腸粘膜のシアロムチンの変動が起こることがわかった。
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