研究概要 |
本研究では非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびウイルス性慢性肝炎など種々の慢性肝疾患の発症・進展に及ぼすアディポサイトカインの影響を明らかにする目的で基礎的検討を進めている。 これまで私たちはアディポサイトカインであるレプチンが肝線維化の進展に重要な因子であることを見出し報告してきたが(Ikejima K et al.,Gastroenterology,2002)、肝線維化において中心的役割を果たしている肝星細胞のPDGF刺激下での細胞増殖がレプチンにより促進されることおよび、レプチンがPDGFによるMAP kinase系およびPI3K/Akt系の活性化を増強することを明らかにし論文発表した(Lang T, Ikejima K et al. Biochem.Biophys.Res.Commun.,2004)。また、グリオトキシンにより誘発される培養肝星細胞のアポトーシスがレプチン添加により抑制され、この抗アポトーシス作用にもPI3K/Akt系が関与していることを見出し学会報告した。これらの検討から、レプチンの線維化増強作用のメカニズムの一端が明らかになった。 一方、C型慢性肝炎の進展およびインターフェロン(IFN)治療抵抗性におけるアディポサイトカインの関与を明らかにする目的で、PLC/PRF/5細胞を用いてIFN受容体下流のシグナル伝達および抗ウイルス活性に対するレプチンの影響を検討した。レプチンはvesicular stomatitis virusに対するIFN-αの抗ウイルス活性を抑制することおよび、IFN-αによるSTAT-1活性化および2-5AS活性誘導を抑制することが判明した。従って、レプチンはC型慢性肝炎における宿主側の難治性因子の一つとして病態に関与している可能性が示唆された。
|