研究概要 |
本研究では非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびウイルス性慢性肝炎など種々の慢性肝疾患の発症・進展に及ぼす代謝性素因の関与について特にアディポサイトカインとの関連を中心に検討を進めている。 本年度は、一昨年、昨年度から引き続き、メタボリックシンドロームモデル動物であるKK-A^yマウスにおける脂肪性肝炎の発症・進展メカニズムについてさらなる解析を行ってきた。KK-A^yマウスにメチオニン・コリン欠乏(MCD)食を負荷した際に、肝線維化の進展を伴う、より強い脂肪性肝炎が生じることを報告してきたが、今年度はその成果をまとめて原著論文として発表した(Okumura K, Ikejima K, et al. Hepatol.Res., 2006)。また、KK-A^yマウスのparental strainであるKKおよびA^yマウスを用いてMCD食負荷による脂肪性肝炎モデルを作成し、KKマウスが有する遺伝背景が脂肪性肝炎の増悪に関与していることが判明した。そのメカニズムとしてはアディポネクチン発現調節機構の異常が関与している可能性が示唆された。 また、肝線維化の進展抑制に関する実験的治療の研究として、ラット四塩化炭素慢性投与モデルに対する低分子量ヘパリンの肝線維化抑制作用について検討し、原著論文として報告した(Abe W, Ikejima K, et al. J.Hepatol., 2007)。低分子量ヘパリンであるダルテパリンはHGF誘導作用および肝星細胞活性化抑制作用を介して肝線維化の進展を抑制することが明らかになり、脂肪性肝炎の進展抑制の点からも有用である可能性が示唆された。
|