研究概要 |
本研究では非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)およびウイルス性慢性肝炎など種々の慢性肝疾患の発症・進展に及ぼすアディポサイトカインの影響について基礎および臨床的検討を行った。その一環として、メタボリックシンドロームモデル動物であるKKA^yマウスにおける脂肪性肝炎の発症・進展メカニズムについて解析した。KK-A^yマウスにメチオニン・コリン欠乏(MCD)食を負荷した際に、肝線維化の進展を伴う、より強い脂肪性肝炎が生じることを見出し、そのメカニズムとしてはアディポネクチン発現調節機構1の異常が関与していることを明らかにした(Okumura K, Ikejima K, et al. Hepatol. Res., 2006)。さらに、KK-A^yマウスのparentalstrainであるKKおよびA^yマウスを用いてMCD食負荷による脂肪性肝炎モデルを作成し、KKマウスが有する遺伝背景が脂肪性肝炎の増悪に関与していることが判明した。 一方、C型慢性肝炎の進展およびインターフェロン(IFN)治療抵抗性におけるアディポサイトカインの関与を明らかにする目的で、PLC/PRF/5細胞を用いてIFN受容体下流のシグナル伝達および抗ウイルス活性に対するレプチンの影響を検討した。レプチンはvesicular stomatitis virusに対するIFN-αの抗ウイルス活性を抑制することおよび、IFN-αによるSTAT・1活性化および2-5AS活性誘導を抑制することが判明し、レプチンがC型慢性肝炎における宿主側の難治性因子として病態に関与している可能性が示唆された。また、C型慢性肝炎で肝脂肪化が強い症例では、ウイルスのgenotypeに関わらずIFN+リバビリン併用療法によるSVR率が低いことが明らかになった(Yaginuma R, Ikejima K. et al. Hepatol. Res., 2006)。耐糖能異常や高血圧などの他の代謝性素因もIFN治療に影響を及ぼしており、これらの代謝性素因の重複がIFN治療における難治性形成にも重要な役割を担っていると考えられた。
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