胆汁酸排泄量はある時点で頭打ちとなり、最大排泄能(Tm)と呼ばれる。近年、胆汁酸のトランスポーターであるbile salt export pump(Bsep)が同定され、機能や制御機序、病態での変化が明らかとなってきている。また、毛細胆管膜トランスポーターは動的な状態にあり、肝細胞内の小胞にあるものが、小胞輸送により毛細胆管膜に組み込まれてその機能を増強すると考えられている。この点から、過去に報告された胆汁酸によるTmの違いはBsepの小胞輸送および輸送能力の差異に基づくと推定される。本研究ではこの点を踏まえ、in vivoでのTmを規定するBsepの小胞輸送に係わる因子を解明するために、Tmの状況下での胆汁酸排泄におよぼすコルヒチンの影響を再評価した。胆管カニュレーションした雄性SD系ラットに、コルヒチン0.2mg/100gを腹腔内投与3時間後に各種放射線標識胆汁酸を持続投与し、その胆汁中排泄を検討した。Bsepの基質であるタウロコール酸(TC)およびコール酸(CA)は1μmol/min/100gで、タウロウルソデオキシコール酸(TUDC)を1もしくは2μmol/min/100gで90分間投与した。また、Mrp2の基質であるタウロリトコール酸サルフェート(TLCS)を0.2μmol/min/100gで60分間持続投与した。TCおよびCAのTmはコルヒチンにより各々、0.94±0.25から0.16±0.11へ、0.81±0.20から0.05±0.02へと著明に低下した。これに対して、TUDCおよびTLCSのTmは各々、1.40±0.32、0.09±0.007とコルヒチン投与により変化しなかった。同じBsepの基質でありながら、TUDCのTmがTCやCAのようにコルヒチンで低下しなかったのは、TUDCに特異的な毛細胆管膜へのBsepの組み込み増加機構の存在のためと考えられた。TLCS以外のMrp2基質の検討は、来年度行う。
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