肝指向性物質を血中に投与した際の胆汁中排泄量はある時点で頭打ちとなり、この値は最大排泄能(Tm)と呼ばれる。近年、胆汁酸、有機アニオンおよぶ有機カチオンのトランスポーターであるBsep、有Mrp2およびP-gpが同定され、機能や制御機序、病態での変化が明らかとなってきている。これらの毛細胆管膜トランスポーターは動的な状態にあり、肝細胞内の小胞にあるものが、小胞輸送により毛細胆管膜に組み込まれてその機能を増強すると考えられている。この点から、過去に報告された肝指向性物質のTmの違いはトランスポーターの小胞輸送および輸送能力の差異に基づくと推定される。本研究ではin vivoでのTmを規定するトランスポーターの小胞輸送に係わる因子を解明するために、Tmの状況下での肝指向性物質の胆汁中排泄におよぼすコルヒチンの影響を再評価した。胆管カニュレーションしたラットに、コルヒチンを腹腔内投与し各種肝指向性物質を持続投与した。10分ごとに胆汁を採取し、これらの物質の胆汁中排泄を検討した。Bsepの基質であるタウロコール酸(TC)のTmはコルヒチンにより著明に低下したが、タウロウルソデオキシコール酸(TUDC)のTmはコルヒチン投与により変化しなかった。Mrp2の基質であるタウロリトコール酸サルフェートとBSPおよびP-gpの基質であるエリスロマイシンのTmはコルヒチン投与により変化しなかった。以上の結果から、同じBsepの基質でありながら、TUDCのTmがTCやCAのようにコルヒチンで低下しなかったのは、TUDCに特異的な毛細胆管膜へのBsepの組み込み増加機構の存在のためと考えられた。また、Mrp2およびP-gpの基質の排泄がコルヒチン投与により変化しなかったことより、Mrp2やP-gpの毛細胆管膜への組み込みは、コルヒチンにsensitiveな小胞輸送にはよらないものと考えられた。
|