我々はC末36個のアミノ酸を欠失したD4GDI(LyGDI/RhoGDIβ/RhoGDI2)(Δ166-201)が、活性型Rac1を細胞膜のエフェクター部位につなぎ止め、Rac1シグナル系を恒常的に活性化することによりがん細胞の転移を促進することを明らかにしてきた。今回、Δ166-201-D4GDI、およびこれに対応するRhoGDIαのC末欠失変異Δ169-204-RhoGDIαには、少なくとも単独ではin vitro transformation活性はないことがわかった。また、C末の6個のアミノ酸を欠いた変異型Δ196-201-D4GDIでさえ活性化型Rac1に結合し、細胞内の活性化型Rac1の量を増加させることを明らかにした。D4GDIのC末4〜8個のアミノ酸の欠失はD4GDIの機能を大きく損なわせるが、この部位はRhoファミリータンパク質のC末のシステインに共有結合するイソプレニル基を補足するためのポケット形成に重要であることがまた、機能的なイソプレニルポケットを失ったRhoGDIはドミナントネガティブ(すなわち、Rhoタンパク質を活性化状態にする)として機能することもごく最近報告された。これらの事実から、我々が見いだしたC末を欠いた変異型D4GDIによる転移の促進は、この変異型がイソプレニル基を介してRhoファミリータンパク質を制御する能力を欠くため、これらに対してドミナントネガティブに作用することによると考えられた。
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