研究概要 |
自己免疫性肝炎(AIH)患者の末梢血中の制御性T細胞(Tr)の割合は健常人に比べて有意に増加していたが、Trの機能を増強すると考えられるFoxp3とCTLA-4のmRNA量は、AIHではcontrolに比べて有意に低下していた。その結果AIH患者のTrによるIL-10産生能は健常人に比べて有意に低下していた。次に末梢血液中に存在するTr自身がToll-like receptor(TLR)を発現しているかどうかを確認したところ、AIH、C型慢性肝炎、健常者の各群ともわずかにTLR3,4,7,9が、また比較的多くTLR6が発現していた。樹状細胞(DC)に関する検討では、末梢血中の単球から誘導したMonocyte-derived DCにはAIH、C型慢性肝炎および健常者の3群ともTLR2,3,4,6,7,8,9のすべてが発現していた。一方、末梢血中に存在しているMyeloid DCとPlasmacytoid DCにおいては、健常者では主としてTLR3,4,6,7,9の発現亢進が認められ、とくにTLR9の発現亢進が著明であったのに対して、AIH患者においてはTLR6のみが発現しており、健常者の発現パターンとは大きく異なっていた。今回の研究から、TrはFoxp3、TNF-R-SF18(GITR)、CTLA-4、CD28などの分子を介したシグナル以外にTLRを介したシグナルによっても機能が調節されている可能性があること、そしてAIHの病態にTrの機能異常が何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、AIH患者のDCにおけるTLRの発現プロフィールが健常者のそれと異なっていたことは、DCへのシグナルがAIHと健常人では異なっており、AIHの病態を規定していると考えられるエフェクター細胞とDCとTrとの3者のバランスに何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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