研究概要 |
1)末梢血中に活性化CD4およびCD8陽性リンパ球が増加していること、膵組織においては線維化、時にリンパ濾胞を形成するものの浸潤するリンパ球はT細胞が優位であること、なかでもCD4陽性細胞によるTh1型免疫応答の関与する可能性を報告した。 2)自己免疫性膵炎自験42例を対象に膵病変、胆管病変、唾液腺病変、糖尿病などの臨床像とIgG4型の抗carbonic anhydrase(CA)-II抗体、抗lactoferrin抗体を含めた免疫学的異常所見との関連性について解析した。その結果、75%の症例に抗lactoferrin抗体、55%の症例に抗CA-II抗体の陽性を認めた。また、どちらかの抗体が陽性であった症例は約90%であった。(J.Pancreas 2005) 3)I型糖尿病とII型糖尿病について抗CA-II抗体と抗lactoferrin抗体を測定するとI型糖尿病患者で優位にこれらの自己抗体の高値が見られ、HLAハプロタイプとの相関が見られた。 4)CA-IIとlactoferrinの自己免疫性膵炎の病変成立と進展における役割を明らかにする目的で、胸腺摘除した制御性T細胞の減少した免疫賦活マウスに対して各抗原(CA-IIとlactoferrin)を感作させ、各臓器炎を惹起することができた。さらに胸腺摘除マウスの感作リンパ球を、ヌードマウスに移入した。モデルを作成し、これらのタンパクが標的抗原である可能性が確認された。(J.Pancreas 2005) 5)モデル動物の膵外分泌腺、ランゲルハンス島、胆管、唾液腺における炎症と線維化を病理組織学的、免疫学的、分子生物学的に解析し、抗原蛋白に対するTh1/Th2免疫応答の病因・病態生理への関与を検討したところ、初期病変にはTh1型免疫反応が、慢性病変にはTh2型免疫反応の関与が示唆された。(J.Pancreas 2005) 6)新しい標的抗原としてpancreaticsecretory trypsin inhibitor(PSTI)の可能性を示唆した。(Pancreas in press,2006)
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