研究概要 |
昨年度、我々はin vitroの実験系においてC型肝炎ウイルスコア蛋白が細胞内インスリンシグナル伝達の中心的分子であるinsulin receptor substrate (IRS)-1およびIRS-2の発現量を低下させ、インスリン抵抗性発現に関与することを明らかにした。本年度の研究目標は一般住民におけるC型慢性肝炎と2型糖尿病両者の因果関係について明らかにすることである。糖尿病の発症には環境要因が大きく関与するため一地域での検討が必要である。そこで、我々が1990年より検診を行っているC型肝炎ウイルス高感染地区において、C型肝炎ウイルス感染と2型糖尿病の因果関係をケース・コホート研究にて検討した。7年間の経過観察において(1995年-2002年)、anti-HCV陽性者(29名)の糖尿病発症率は無作為に抽出したanti-HCV陰性者(42名)の糖尿病の発症率に比べ約3倍高値を示した。しかしながら、統計学的には優位差を認めなかった(Relative Risk 3.62,P=0.08,C.I. 0.83-20.89)。しかし、anti-HCV陽性者をHCV core抗原量にて層別化したところ、HCV core high titer群(15名)ではanti-HCV陰性者に比べ、5.6倍糖尿病の発症率が高く、統計学的にも優位な差として認められた(Relative Risk 5.60,P=0.02,C.I. 1.41-37.42)。本研究により、一般住民においても、C型肝炎ウイルス感染者は非感染者に比べ糖尿病を高率に発症することが明らかとなった。
|