研究概要 |
前年度までに、頭部顔面の形態形成において、鰓弓上皮からのET-1シグナルが神経堤細胞のETA受容体(ETAR)を介してホメオティック遺伝子Dlx5/6を制御し、鰓弓の背腹軸パターン形成を担っていることを示した。本年度は、ETAR遺伝子座に変異lox配列を導入することによりCre依存性に遺伝子変換が可能なマウスのgermline transmittionに成功したため、系統的遺伝子ノックインが可能になった。ETAR-変異lox配列導入ノックアウトマウスでは、ET-1ノックアウトマウスや既報のETARノックアウトマウスとほぼ同様の表現型を示していることが確認できた。このマウスを用いて、LacZ遺伝子と置換したことにより、鰓弓および心大血管形成に関与するET-1シグナルの標的細胞がwhole mount in situ hybridizationより詳細に可視化できた。これにより、ET-1/ETAR細胞内シグナル伝達に関わる遺伝子の導入によるETAR(+)神経堤幹細胞動態の変化を解析する。例えば,あるシグナル分子のドミナントネガティブ型を導入することでET-1遺伝子欠損マウスと同様の表現型が現れた場合,そのシグナル分子が関与する経路がET-1の作用に重要であることが示唆される。これにより、ET-1/ETAR細胞内シグナル伝達に関わる遺伝子のノックインが進み、ET-1/ETARによって活性化される細胞内シグナル経路のうち,どの経路が分化や形態形成に重要かを個体レベルで証明することが可能になった。また、ET-1遺伝子と置換することにより、ET-1シグナルが神経堤細胞のETA受容体を介して鰓弓の背腹軸パターン形成を担っていることを積極的に証明出来ることが期待できる。
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