研究概要 |
以前より我々は、頭部顔面の形態形成において、鰓弓上皮からのET-1シグナルが神経堤細胞のETA受容体(ETAR)を介して作用すること重要である事を示してきた。この経路は下流のホメオティック遺伝子Dlx5/6を制御し、鰓弓の背腹軸パターン形成を担っている。すなわち、第一鰓弓は発生中期に背側・腹側とも上顎パターンに決定付けられているが、第一鰓弓腹側にのみET-1-ETAR-Dlx5/6シグナルが作用することで、下顎パターンに変換することを明らかにした。そこで、ETAR遺伝子座に変異lox配列を導入することによりCre依存性に遺伝子可変マウスの作成を試み、系統的遺伝子ノックインを可能にした。ETAR-変異lox配列導入ノックアウトマウスは、ET-1ノックアウトマウスや既報のETARノックアウトマウスとほぼ同様の表現型を示していることが確認できた。このマウスを用いて、ETARプロモーター下にLacZ遺伝子をノックインした。これにより、鰓弓および心大血管形成に関与するET-1シグナルの標的細胞がより詳細に可視化でき、心血管形成過程の追跡、他の細胞群との相互関係の解析が可能となった。さらに、ETAR, ETBR, ET-1, Dlx5/6, Gq11,等の遺伝子ノックインが同時進行中であり、これらにより、ETA受容体ETB受容体の個体発生における役割の互換性や、ET-1が異所性に第一鰓弓背側に発現することで上顎が下顎化するか、さらに、鰓弓・心血管形成に直接関与している下流シグナルは何であるか等が明らかになると期待される。
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