研究課題
メタボリックシンドロームでは、肥満、耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧などの冠動脈疾患危険因子が相互に関連し、冠動脈疾患のリスクを高める。メタボリックシンドロームにおいては、血管壁に対する直接的な物理化学的あるいは代謝的なストレスだけではなく、脂肪組織を含む多様な臓器から分泌される液性因子が、病態形成に重要である。本研究計画ではメタボリックシンドロームにおける血管-脂肪組織の臓器連関と血管病態形成のメカニズムに関して、各細胞での転写制御とアディポサイトカインによる情報伝達に着目して明らかとする。脂肪細胞機能の転写制御に関しては、平滑筋形質変換に重要な転写因子KLF5が脂肪細胞分化に必要なことを見いだした。さらに、成体においても全身の代謝制御に重要であることを見いだした。KLF5は代謝ストレスに対しても作用すると考えられる。脂肪細胞から分泌され、血管壁細胞に作用すると考えられているアディポネクチンについて、血管平滑筋細胞においてKLF5の発現誘導を阻止する作用を持つことを見いだした。この作用にはAMPKが重要である。また、アディポネクチンノックアウトマウスを用いた検討により、アディポネクチンがレニン・アンジオテンシン系による血管および代謝臓器機能障害誘導作用に対して臓器保護的に機能することを見いだした。血管壁においては、前記したKLF5発現阻害など、ストレス応答を制御する転写ネットワークの修飾作用が重要である可能性が示唆された。我々の結果はレニン・アンジオテンシン系が心血管系のみならず代謝臓器の機能障害にも重要であること、またKLF5が心血管系と代謝臓器の両者で機能することなどから、メタボリックシンドロームにおける各種代謝異常と血管傷害は同時に進行することを強く示唆する。
すべて 2006 2005
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Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
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