研究概要 |
【背景】圧・容量負荷による病的左室肥大では胎児型遺伝子の発現が生じることが知られている。しかしながら、右室圧負荷による右室肥大時に左室がどのような影響を受けるかに関する報告は少ない。今回、モノクロタリン(MCT)皮下注により作成した肺高血圧右室肥大/不全モデルを用い、両心室の遺伝子発現に関して検討した。【方法】6週齢成雄ラット(100-130g)にMCT(60mg/kg)皮下注し(MCT群)、6週間後心臓を摘出し遺伝子解析(RNase protection assay ; RPA)を行なった。コントロールとして溶媒を皮下注した同齢のラットを用いた(C群)。【結果】MCT群(n=4)において右室重量(289%,p<0.05 vs C群,n=4)は有意に増加していたが左室重量には変化を認めなかった。右室における遺伝子発現(mRNA)に関するRPAによる検討では、MCT群において筋小胞体Caポンプ(SERCA,35%)、α-MHC(13%)の有意な低下(p<0.05)と、ANP(1100%),BNP(1100%),skeletalα-actin(462%),β-MHC(313%)の有意な上昇(p<0.05)すなわち胎児型遺伝子の発現パターンを認めた。面白いことに、SERCAを除き同様の遺伝子発現パターンを中隔のみならず左室自由壁にも認めた。【結論】MCT処理により生じた肺高血圧モデルにおいて右室は肥大しその遺伝子発現は胎児型を示していた。ここで、圧負荷を受けていない左室でも同様な遺伝子変化を生じていたが肥大は認めなかった。以上より遺伝子変化と肥大が必ずしも共通の刺激のみで生じていない可能性が示唆された。
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