研究概要 |
心筋/血管リモデリングにおける炎症の影響を解明し、遺伝子治療などによる治療効果を確認するために、種々の動物モデルを用いて実験した。まず、動物実験モデルを用いて病態解析と予防効果を検討した。 心筋リモデリングに関しては、ラット心筋虚血/再潅流傷害モデルを作成し、I-kB阻害剤を投与したところ、有意に心筋傷害範囲を縮小することができた(Onai Y.Cardiovasc Res.63:51-59,2004)。また、HGFをマウス心臓移植モデルに投与すると、心筋傷害が抑制されて一部に免疫寛容が導入された(Yamaura K.Circulation,2004)。さらに、ラット心筋炎モデルにスタチンを投与すると心筋への細胞浸潤が抑制されて心機能が維持された(Wakizono R.Cardiovasc Res,2004)。 血管リモデリングに関しては、マウス動脈傷害モデルを作成しVCAM-1とVLA-4の中和抗体を投与したところ、平滑筋細胞の増殖が抑制され内膜肥厚の程度を軽減することに成功した(Suzuki J.Acta Cardiologica,2004)。また、E-selectinの中和抗体を投与しても内膜肥厚の程度を軽減できた(Gotoh R.Arterioscler Thromb Vasc Biol,2004)。NF-kBを介して炎症抑制効果が確認されているカテキンを高脂血症マウスに投与したところ、粥状動脈硬化が抑制されることも明らかにした(Suzuki J.Acta Cardiologica, in press)。さらに、我々は心臓移植後の血管病変の進展にPD-1(Koga N.Arterioscler Thromb Vasc Biol,2004)やLIGHT(Kosuge H.Arterioscler Thromb Vasc Biol,2004)が重要な役割を果たしていることも明らかにした。 これらのデータを基礎に臨床応用のためミニブタ冠動脈傷害モデルを作成して、その部分に炎症を抑制するNF-kBデコイを導入し、その導入効率と安全性を検討した。その結果、臨床での冠動脈形成後再狭窄をNF-kBデコイで予防することが可能であると判断し、臨床でその効果の検討を開始した(Suzuki J.Circ J,2004)。
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