研究課題
基盤研究(C)
我々は、自己骨髄細胞を用いて重症下肢虚血患者を対象に血管再生療法を行い、その有効性と安全性を報告してきた。今回、治療の有効性を高め、かつ患者への侵襲の少ない新たな心血管再生療法の確立を目的として、アポトーシスの制御因子であるG-CSFやM-CSF、エリスロポイエチン(EPO)による心血管疾患モデル動物に対する治療効果およびその作用機序について検討を行い、以下の研究成果が得られた。1.G-CSFおよびM-CSFによる傷害血管修復作用G-CSFは骨髄中の血管内皮前駆細胞を末梢血中へと有意に動員させ、マウス血管傷害モデルの再内皮化を有意に促進し、さらに内膜肥厚を抑制したことから、G-CSFの傷害血管修復作用を明らかとした(Cardiovasc Res 2006)。また、M-CSFはEPCには作用しないが、骨髄中のCXCR4陽性細胞を末梢血中へと動員させ、このCXCR4陽性細胞が傷害血管で発現するSDF-1と相互作用して内膜肥厚を逆に増悪することを明らかとし、CXCR4陽性細胞が血管平滑筋前駆細胞(SMPC)として機能している可能性を示した(ATVB2007)。2.G-CSFおよびM-CSFによる心筋梗塞に対する治療効果G-CSFおよびM-CSFは培養心筋細胞において、アポトーシスを抑制した。また、G-CSFおよびM-CSFがマウス心筋梗塞モデルにおいて、心機能障害を抑制して心室リモデリングを改善することを明らかとした。特に、M.CSFは骨髄中のCXCR4陽性細胞を末梢血中へと動員させ、このCXCR4陽性細胞が梗塞心筋で発現するSDF-1と相互作用して、心筋梗塞後の改善作用示すことを見出した。3.EPOによる心筋炎に対する治療効果EPOは培養心筋細胞においてアポトーシスを抑制することから、ラット自己免疫性心筋炎モデルにおけるEPOの治療効果を検討し、EPOが心筋炎症面積や心重量/体重量比、心臓への炎症細胞浸潤や炎症性サイトカインの発現を有意に低下させ、心機能を改善することを明らかとした(CDT2007)。
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