研究概要 |
日本白色種ウサギにて、30分虚血・再灌流モデルを作製、梗塞24時間後からG-CSF10μg/kg/day(G-CSF群)あるいは生理的食塩水(control群)を5日間連続皮下注射し梗塞14月目、3ヵ月目に心エコーにて心機能を測定、さらに梗塞サイズを求めた。G-CSF群ではcontrol群に比して、梗塞サイズ縮小、左室リモデリング改善、心機能改善を認めた。さらに、DiI色素にて骨髄細胞をラベルしたウサギにて同様に検討した結果、control群においてDiI陽性かつtroponin I陽性細胞、DiI陽性かつCD31陽性細胞、DiI陽性かつ1A4陽性細胞が存在し、このことは骨髄細胞由来の心筋細胞、血管内皮、血管平滑筋、筋線維芽細胞が梗塞領域に存在することを示す。G-CSF群ではこれら細胞の頻度が増大した。さらに、梗塞後48時間、7日、14日、3ヵ月における経時的な梗塞心筋組織の組織学的変化について検討した結果、梗塞48時間の時点では、survived area, infarct areaともに両群間で差はないが、7日目、14日目、3ヵ月目において、G-CSF群ではcontrol群に比してinfarct areaは小であり、survived areaは大であった。梗塞領域のfibrosisをSirius-red染色にて計測したところ、14日目、3ヶ月目にてG-CSF群では有意に小であった。梗塞48時間の時点で、G-CSF群ではより高度の炎症細胞浸潤が非梗塞領域から梗塞領域を囲むかたちで認められ、macrophageの数は梗塞48時間ではG-CSF群>生食群、7日目ではG-CSF群=生食群、14日目ではG-CSF群<生食群、3ヵ月目ではG-CSF群<生食群を示した。さらに梗塞7日目にてMMP1,MMP9の発現がG-CSF群にて大であったことから瘢痕組織が減少しリモデリングが改善されたと考えられる。G-CSFによる左室リモデリングの改善、心機能の改善には骨髄細胞誘導による心筋組織再生に加えて梗塞部の治癒過程促進が関与していると考えられた。
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