研究概要 |
弾性線維は、伸び縮みする臓器・組織(動脈・肺・皮膚など)に多くあって、その弾性を担っている。特に動脈では、脈圧を吸収するために弾性線維は弾性板という構造を作り重量の半分を占めている。老化によって動脈は硬くなり脈圧は増加するが、その多くは弾性線維の劣化・断裂が原因である。しかし弾性線維の形成機構も老化に伴う劣化や断裂の原因も理解が進んでいない。申請者は発生期の動脈に多く発現するDANCE(Developmental Arteries and Neural Crest EGF-like,またはfibulin-5)というインテグリンリガンドをクローニングし、そのノックアウトマウスを作成したところ、全身の弾性線維がばらばらになっていることを見出した。このためDANCE遺伝子欠損マウスの表現型はヒトの老化に非常に類似しており、皮膚は弾性が無く垂れ下がり、肺気腫を来たし、動脈は蛇行して硬化していた。すなわち、DANCEは弾性線維形成に必須のタンパクである。また、in vitroで発現したDANCEの一部がプロテアーゼで切断されていることも見出した。本研究では、DANCEタンパクの増減・プロテアーゼによる切断が老化に伴っておこり、弾性線維の変化につながるのではないかという仮説を検証することを目的とする。この目的のため、まずヒトDANCEの全長型・切断型両方を認識するポリクローナル抗体を作成した。この抗体を用いてさまざまなヒト皮膚組織のウェスタンブロットを行い、加齢によって皮膚のDANCEタンパク量が著減することを見出した。興味深いことに、顔面以外(臀部など)の皮膚ではDANCEタンパクが保たれていた。加齢によるDANCE量の減少は、全長型・切断型ともにおこっていたが、全長型は特に少なくなっていた。
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