弾性線維は、伸び縮みする臓器・組織(動脈・肺・皮膚など)に多くあって、その弾性を担っている。インテグリンリガンドDANCEの遺伝子欠損マウスは全身の弾性線維がばらばらになっており、DANCEが弾性線維の形成に必須であることがわかった。本研究では、DANCEタンパクの増減・プロテアーゼによる切断が老化に伴っておこり、弾性線維の変化につながるのではないかという仮説を検証した。 若年及び老齢のマウス皮膚組織中のDANCEタンパクをウエスタンブロットで検出したところ、若年マウス皮膚では全長のDANCEがほとんどであったが、老齢マウス皮膚ではDANCEの大部分が切断されて分子量が小さくなっていた。このDANCE切断は培養細胞においてもおこっており、セリンプロテアーゼ阻害剤によって完全に阻害できた。切断部位のアミノ酸配列をエドマン分解によって解析し、リコンビナント切断型DANCE蛋白を作成した。 リコンビナントDANCE存在下で細胞を培養すると弾性線維が形成されるDANCE依存的弾性線維形成アッセイ系を作成し、全長DANCE蛋白と切断型DANCE蛋白の作用を比較したところ、切断型DANCE蛋白には弾性線維形成誘導活性がないことがわかった。すなわち、生体内及び培養細胞でおこっているDANCEの切断は、DANCEの弾性線維形成能の不活化であると考えられた。ヒト皮膚においてもDANCEの切断は確認されたが、加齢によって全長型・切断型DANCEともに減少していた。マウス大動脈においては加齢によって組織中DANCEタンパク量が半分近くに減少していたが、血管の硬化はおこっていなかったため、半分のDANCE量でも弾性板の維持には十分であると考察された。
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