1)Sema6D-Plexin-A1シグナル伝達系分子の同定 Sema6Dの心臓における作用はその受容体であるPlexin-A1の細胞内シグナルにより制御されていることをあきらかとした。この細胞内シグナル伝達において細胞の移動、形態変化を制御する因子としてsmall G蛋白質特にRac-GTPが重要であることが示唆されていた。そこでPlexin-A1の細胞内シグナル伝達分子をTwo-hybrid法により同定した。ベイトとしてPlexin-A1の細胞質内領域を用いて心臓cDNAライブラリーより結合分子を検索した結果、FERM domainをN末端にもちRacに対するGEF作用を有するFARP2を同定した。 (2)FARP2の機能解析 FARP2はPlexin-A1の細胞質領域に結合する。この結合はPlexin-A1の共受容体であるNeuropilin-1の存在下で増強した。Sema3AがNeuropilin-1に結合するとFARP2は、Plexin-A1より解離し、その結果そのGEF活性が増強する。この局所でのRac-GTPの増加は一連のシグナル伝達を惹起した。すなわちRac-GTPによるPlexin-A1へのRnd1の結合はPlexin-A1のR-Rasに対するGAP活性を増強し、R-Ras-GTPの減少は細胞骨格の変化をもたらし、細胞の移動を減弱させた。 (3)Sema6D欠損マウスの作成によるSema6Dのin vivoでの機能解析 マウスgenomic DNA libraryより得られたSema6D及びPlexin-A1のゲノミックDNAの機能的部位にネオマイシン耐性遺伝子を挿入しターゲティングベクターを作成した。変異を生じたES細胞を用いてSema6D欠損マウスを作成する。現在キメラマウスの作成に成功し、ヘテロマウス同士の交配によりホモマウスを確立する段階である。
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