研究概要 |
Angiotensin-converting enzyme 2(ACE2)欠損マウス(ACE2^<-/y>が自然経過で心収縮力低下と心拡大を呈することが報告され、ACE2が心不全に対して防御的に働いている可能性が示唆されている。一方心臓への圧負荷は局所レニンアンジオテンシン系の活性化により局所AII濃度を増加させることが知られている。ACE2^<-/y>を用いて圧負荷モデルを作成しACE2の心不全の対する新しい治療ターゲットの可能性について検討した。12週齢の野生型マウス(WT)とACE2^<-/y>に大動脈縮窄法(TAC))による圧負荷を2週間行った。圧負荷によりACE2^<-/y>では肺うっ血を伴う心拡大と心収縮力低下を認めカンデサルタン投与によりWTマウスと同等まで改善した。この変化は組織学的およびBNPやERK,JNK活性でも確認できた。またTACによる心臓中AII濃度とMAP kinase活性の上昇はACE2^<-/y>でより顕著でありカンデサルタン投与によりMAP kinase活性の上昇はWTマウスと同等まで抑制された。また1ヶ月後の心不全死はACE2^<-/y>で高率であった。以上の結果より局所AII上昇に対する分解能力の欠如に起因したAT1受容体を介したシグナルの活性化がACE2欠損に伴う変化の機序であることが示唆された。今後ACE2を導入して機能レスキューすることにより心不全・不整脈治療の新しいターゲットとしてのACE2の役割が明らかになると考えられる。
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