研究概要 |
組織幹細胞は、多能性を有し、心筋細胞に分化できると考えられているが、実際にはこれらの実験における心筋への分化の効率は非常に低いものであり、細胞移植治療に供するだけの細胞数を得ることは難しい。そこで本研究では心筋、舌筋の組織から、表面マーカーを利用して幹細胞を分離し、どの組織からの幹細胞が最も効率よく心筋への分化を起こすか、また心筋の分化に必要な外的因子について検討を行った。C57/BL6マウスの心筋、舌筋から0.2%コラゲナーゼ処理により単離した、SCA-1陽性細胞および陰性細胞がDMEM+10%FBSをベースにした培養液に,種々の成長因子(EGF,PDGF-bb)を加え、37℃、5%CO_2のもとで培養することにより2週間後に心筋特異的マーカーである、NKX2.5, connexin 43, ANPの発現をRT-PCRおよび免疫染色法で確認した。次に圧負荷培養が組織幹細胞に対し心筋の遺伝子発現を亢進させるか否かを検討にし、圧負荷はMX2.5の発現を促進することを示した。また、拍動する細胞に分化したときに細胞内カルシウム動態の解析をFluo-3を細胞内に負荷し、レーザー共焦点顕微鏡を用いて解析した。さらに細胞間の電気的結合を仲介するgap junctionの発現を検討するために細胞内にCalcein-AMを負荷し、ラッと新生児心筋細胞との共培養下でのgap junction形成をdye transfer methodにより検討した。舌筋由来の細胞は自己拍動を起こし、細胞内カルシウム濃度解析により、同期して収縮することが確認された。また、圧負荷はこれらの細胞の自己収縮の頻度を増加させた。さらに、calceinのdye transferが確認され機能的なgap junctionの形成ができていることを確認した。これらの検討により舌由来幹細胞が心筋再生に有用であるとともに生理的圧負荷が分化促進に有用である可能性が示された。
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